<農業者ネットワーク・・・・ふるい下米の矛盾・・・>

大潟村熱帯植物園「金花茶」をいう椿で

「ふるい下米」って御存知ですか。


稲作農家の方ならわかるおもいますが、玄米を販売用米とくず米に分けるため、米選機に玄米をかけます。販売用米はそのまま残りますが、くず米等は下に落ちます。その下に落ちる米を「ふるい下米」と言います。それは、主食米としては認定されません。


 ですから、政府の管理外となりますその「ふるい下米」から、主食米を選別する技術が近年開発進歩し、それを主食米等に転用しているケースが多々見当たるのです。それが、それが何十万トンになると言われています。減反面積に大きく影響すると言われています。

このことが、一月の日本農業新聞の全国版に掲載され、大きな反響がありました。これは大潟村農業委員会が赤松農水大臣宛に提出したものです。当ネットのK会員が中心になって取組みました。それを転載させていただきます。<



米の流通改善による需給バランス改善策のご提案 (案)


 政府が打ち出した「米の生産削減政策から米を作る政策への転換」につきまして、当農業委員会としてもその趣旨に衷心よりご賛同申し上げ、ご成功を期待申し上げます。


 またこの度は、当村に端を発する問題でご心労をおかけしましたことに対し、村民の一人として深くお詫びを申し上げます。
 つきましては、政府が行う主食用米の生産数量目標の配分に関しまして、下記の提案をさせていただければと存じます。


 当委員会は、政府が行った22年産主食用米の生産数量目標2万トンの削減は必要なく、むしろ米流通のあり方を改善することで30数万トンの減反緩和を可能とする方策があると考えています。それは生産者にとって負担軽減となるだけでなく、政府にとりましても財政負担の削減と食料自給率を約1ポイント向上させる大きな効果があると考えており、是非ご検討いただきますよう、お願い申し上げます。

1.米流通の落とし穴

 まず、現状の米流通における大きな落とし穴について申し上げます。
 それは米トレーサビリティ法が成立してもトレース不可能な米が数十万トンも流通しており、実態がまったく把握されずに野放しになっていることです。大量の不透明な米流通がコメ余りや米価下落を招いているといっても過言ではなく、新政策の成功には米流通の透明化が不可欠ではないでしょうか。


 その米は、収穫した玄米を選別した際に下に落ちた米粒、いわゆる「ふるい下米」であります。
 ふるい下米はリサイクルした古紙袋に入れられる場合が多く、その場合、生産者名はもちろん県名や産年などの情報は一切特定できません。


 政府も正確な数量を把握していません。ところが、現行のJAS法では『複数原料米・国内産10割』と正規の表示できてしまい、主食用米として堂々と販売されているのが実態です。


 ふるい下米にはどんな問題があるかといいますと、

(1)農産物検査で「規格外」以下に相当する品位の米であり、

(2)古紙袋に入ったふるい下米が農家の庭先でトラックに積まれ県境を越えて移動すると経路追跡が不可能となる。


(3)「国内産」と表示されれば食味の劣る米が混米されても判別不可能(おかしなことに、弁当やおにぎりに使えば、農産物検査を受けなくとも「○○県産」と産地表示をすることさえ可能です)。


(4)「低価格米を求める声に応える」との名目で安いふるい下米を格上げ混米する一部の流通業者にとって不当な利益の温床になるなどです。


 政府にとっては、大量流通が推測できても実態が不明では、需給計画に狂いを生じても正しい対策はとれないでしょう。

 こういった状況を招いたのは現行制度の不備が原因です。前政権下では問題を置き去りにしたまま減反の拡大が繰り返されました。しかし、単なる生産数量目標の削減は片手落ちであり、結果としてコメ余りも解消されませんでした。


 現政権におかれましては、こうした問題に対処していただくことで減反の拡大は必ずしも必要なく、むしろ減反緩和とそれに伴う財政負担の削減が可能となることを是非ご理解いただければと存じます。


2.米表示の改善による需給バランス改善と減反緩和


 では話をまとめながら改善の具体策について説明させていただきます。

(1) もともと低価格で収穫量全体の数%(60万トン以上)発生するふるい下米は「食料自給率向上に有効な食糧」と位置づけできます。


(2) しかし、現在の制度ではふるい下米に関する規定や基準がなく、生産量や用途、表示を特定することができないため、有効に活用されていません。


(3) これまでブラックボックスであったふるい下米の生産量を明らかにするには、JAS法に「整粒」と「ふるい下米」に関する定義及び基準を設けることで可能になります。


(4) 整粒とふるい下米がそれぞれの品質に見合った用途に活用されれば、主食用米からは数十万トンが分離され、不足しがちな加工用原料米として供給可能になります。(これは従来の「加工用米」よりも価格面で適しています)
 結果として生産数量目標の削減は不要となるほか、数万haの減反緩和とそれに伴う経費の削減及び自給率の向上が可能になると考えられます。


 ここでより具体的に、時代に合っていない重要な政府統計値と修正案についてご提案申し上げます。


 政府は平成20年産の全国水稲収穫量を881万5000トンと発表しています。これは「坪刈り調査」における1.7ミリのふるい網を使った推計値ですが、この推計方法は実態と大きくかけ離れていると言わざるを得ません。なぜなら、1.7ミリのふるい網を使用している稲作農家は全国でわずか0.6%に過ぎず、95.2%の農家は1.8〜2.0ミリといったより大きなふるい網を使用しているためです。


 その誤差は、米穀データバンク社によれば、「1.7ミリ上〜1.9ミリ下の網下米」(中米と呼ばれています)として試算されており、実に65万トンに上るとのことです。主食用として流通するのはこの中の30〜40万トンと言われています。


 このように、政府の推計値「全国水稲収穫量」は収穫した玄米からふるいで除外された量と再び主食用として戻る量が算入されておらず、単に1.7ミリを基準とした理論値に過ぎないという致命的な問題があります。


 水稲収穫量は生産数量目標の配分や交付金額の算定など、あらゆる米政策の基礎であり、実態を正しく反映していないのは極めて重大です。このため、算定基準値(1.7ミリ)を実態に即した数値に見直すと同時に、実際の流通・表示に反映させる仕組みが不可欠です。


 以上、旧政権の下で長年続いてきた不都合な制度のひとつについて申し上げました。このような事例は数多く、たとえ時間が掛かっても、ひとつひとつ改善を積み重ねることで日本農業の再生を実現していただきますようお願い申し上げます。