秋田県JA一本化を問う(1)

 10月17日に突如と県内JAの一本化の記事が報道された。約20年前、地域農業の振興と農家組合員の所得の向上を目的に、県内14JAに再編し、それを進めてきたはずなのに、更なる合併は必要なのか、また、それを再度5JAにするという計画はどうするのか、厳しい農業情勢の中で上部の考えに翻弄される現場の農家組合員をどう考えているのか。JAは協同組合であり、その主人公は農家組合員である。協同組合の理念と民主主義的運営の原則が貫かれていなければならない。それを踏まえて、現場の一農家組合員として、また嘗てJA職員だった者として問題提起したい。

 まず、第一に「さきがけ」の報道によるとそれは「スケールメリットを生かし農産物の販売戦略により生産者の所得増大を図る」ことを目的としている、とある。では、前の広域合併ではそれは実現しなかったのか、まずはそれを問いたい。説得力のある「言い訳」は出てくるのか。一本化に当たってはその総括が第一ではないか。県内一本化すれば今以上に目的が達成できるという保証はあるのか、明らかにされたい。
農産物は地域の特長による量的質的の違いなど、県内統一した販売戦略をとることは極めて難しい。適材適所に人的資源の配置と綿密なマーケッテングがないと販売戦略は成り立たない。特に野菜などは農家から出荷されたものを市場に送り出すだけでは有利販売は出来ない。11月の県JA大会に提案するというが、広域合併の総括としてそれらを検証したデーター、今後の対策等を提出することが出来るのか、はなはだ疑問である。
過去の広域合併はその後にどこのJAでも支所の統廃合、営農指導員の減員等組合員サービスは低下したといわれている。中央会は20年前の合併時点での支所(支店)数と現時点でのそれ、同様に営農指導員の人員など明らかしたうえでその弁明を聞きたい。それと同様に販売体制も強化されたとは思えない。米販売にしても広域化した分全農を経由した取引が少なくなりその分農家手取りが増えたとはいえるが、秋田おばこのようなリスクを抱えることになり、その分の内部留保が必要となることを忘れてはならない。単協における理事会の体制がしっかりしていないと、秋田おばこのようなことはどこのJAでもありうることである。
まずは、トップだけで決めるのではなくて、農家組合員がそれを必要としているかどうかを検討することが第一ではないか。

第二に、経営環境が厳しくなったことが上げられている。農家組合員の減少やそれに伴う出資金の減少、事業総利益の減少等々このままでは立ち行かなくなるという理由である。事業利益の減少を農家数の減少のせいにしている。農家の農協離れが激しくなっているという解釈ではないらしい。「逃げる農家、追う農協」といわれて久しい。農家のニーズにあった事業展開があれば農家は逃げない。営農指導もろくにせず、生活用品や共済(保険)押し売り中心の事業展開では立ち行かなくなるのは当たり前である。私がJA職員であった頃は、今の時期、来期に備えた種籾の注文や農業資材の相談で営農指導の窓口はテンテコマイであった。今は、農家が訪れてもそれに対応できる営農指導員は限られている現状がある。メロンを作ったことのない職員がメロンの指導したり、花を作ったことのない「指導員」が花の指導したり・・・・こんな状況であるから、まじめな組合員は逃げてしまうのは当たり前である。昔は「あの指導員が共済(保険)の勧誘に行けば、断られない」というなかで事業成績を伸ばしていったものであった。それが良いのかわからないが、そういう信頼関係がJAにはあった。事業総利益が減少しているということは、JA(職員)との信頼関係が断たれてきているということにつきると思う。写真は収穫適期を迎えたナメコです。(続く)