<椎茸作業・・・植菌作業から(三)・・・>

ホダ木にゴムタケという腐朽菌が発生し

<椎茸作業・・・植菌作業から(三)・・・>


 形成菌による椎茸栽培はいわゆる「促成栽培」なのである。活性的な菌を使用することと、人工的に椎茸菌が繁殖しやすい環境を作ることがポイントなのである。


先に述べたように「直射日光が当たらない」「風通しがよい」「排水が良い」「湿度が低い」の4条件をハウス内に人工的に作ることから始まる。
 それともう一つ忘れてはならないのが、原木の「質」である。原木自体が椎茸菌の繁殖しやすい環境でなければならないのである。じゃ、どういう原木がいい原木なのか。



 まず、木が柔らかい方がよい。柔らかいとはどういうことなのか?簡単に言えば「若い木」ということである。10年生〜15年生までの直径が10センチ前後の原木である。椎茸菌は原木の維管束に沿って繁殖する。15年以上の老齢木は木の中心部(「心材」という)の維管束が詰まったり、狭まったりして菌の繁殖が難しい。



 次に、乾燥が十分だということである。水分計での計測だと30%〜35%の水分が最良といわれている。椎茸菌もカビの一種なので原木内の酸素を吸収して繁殖する。原木の維管束に水分があると、酸欠になり十分繁殖できない。特に心材部分は水分が抜けにくい。では、最良の水分の原木をどのように作るかということであるが、それは、伐採時期が大きなポイントとなる。


 三月にほぼ植菌を終えるわけであるが、その前年の10月〜11月にかけての伐採が原則である。いつでも伐採していい訳ではない。10月から11月はナラの木は紅葉が始まる時期である。紅葉が始まるということは、木は翌年の発芽に備えて栄養分を溜めて、かつ、葉を枯らして水分のこれ以上の蒸散を防ごうとする。


生理的に最小の水分になるときである。このとき伐採して乾燥し水分を抜く。一月くらいすると結構水分が抜ける。その後で玉切り(約1メートルくらいのホダ木に適した長さに加工すること)をする。乾燥が不十分なまま玉切りをすると、椎茸菌以外の腐朽菌(いわゆる「害菌」)が進入してくる確立が高くなる。



 そうすると、原木自体が椎茸菌の繁殖に最高の環境になり、形成菌の繁殖が旺盛になる。駒菌の場合は、形成菌のように神経を使わなくても良いといわれている。原木の環境が悪くても、ホダ場の環境がよければ時間をかけて徐々に繁殖していくからである。


つまり、植菌後早く生産するため、形成菌で手間隙をかけてやるか、駒菌で労力をかけないで時間をかけて栽培するかはその人の考え次第である。考え次第というよりも、ホダ場しだいであると思ったほうがよい。ホダ場環境が良いか悪いか、これが決定的な相違となると思われる。


幸いにして、私の場合は最高といわれる環境である。できれば駒菌で労力を省きながら、その分規模拡大をしたいと思っているが、思い通りにいくかはわからない。


 今年は、直径30センチくらいの大径木にも試験的に植菌しました。(写真)大きくて持ち運びには大変でした。この木から椎茸が発生するのは、翌々年の春になる予定です。