<椎茸作業・・・植菌作業から(二)・・・>

松林(ホダ場)での鎧積みです

<椎茸作業・・・植菌作業から(二)・・・>


 いづれにしても原木椎茸は重労働だと思う。農家が高齢化すればおのずと限界が来るだろう。我が家だってその通りである。私が継がなければこの地区の原木椎茸栽培はほぼ終了ということになる。


 話が前に戻るが、植菌作業をおえて、原木をホダ場で仮伏せ(前回の写真参照)にする。この仮伏せは原木に植菌した椎茸菌が原木に活着させることを目的にしている。活着というのは、作物でいえば、根が植え返した土壌に根付くことである。稲の活着と同じである。


この仮伏せも駒菌と形成菌では違う。駒菌は松林(ホダ場)に二段くらいの棒積みにしておけばいいが、形成菌はハウスの中で温度と湿度を調整しながら、人工的に最適な環境を作るため、手間隙かけなければならない。


駒菌はただ、ホダ場に積んでおくだけといっても差し支えないが、形成菌はハウス内で棒積みにし、ビニールシートをかけ、その上に遮光幕をかけて温度調節をする。天気の良し悪しで遮光幕を掛けたり外したりである。


 そうすると2ヶ月くらいでホダ木の木口(切り口)に菌糸紋という椎茸の菌糸が白く現れてくる。そうすれば、活着したと判断する。木口に白いペンキを塗りたくったようになる。そうしたなら、本伏せである。駒菌は写真のように「鎧積み」にする。形成菌は、ビニールを剥がし、低く積み替えて今度は散水することになる。


駒菌の本伏せは棒積みから、一本一本「鎧積み」にするのだから、これもまた簡単な仕事ではない。昔は手作業でやっていたが、今は私の場合「クジラ鍵」という30センチちょっと木の柄の先に鍵がついている道具を使う。そうすると屈まなくてもいいから、作業はすごく楽である。


両手に一本ずつ「クジラ鍵」を持って、鍵の先端を木口の両端に刺して移動させる。親父もこのクジラ鍵を使って作業をしたことはない。これだと一日に2000本は処理できる。一万本あっても4〜5日の作業である。しかし、思いっきり汗を掻きながらの重労働である


この作業は本来は6月にするのがベストだといわれている。しかし、松林では6月は無理なのである。毛虫(昆虫の幼虫なんだが)の「毛」が飛散してそれが私の皮膚につくと腫上がり痒くなって大変なことになる。半日やったら間違いなく皮膚科に直行しなければならなくなる。私の体質なのであろうか。


だから、幼虫が成虫化した7月に入ってからの仕事になる。その7月は決して涼しくはない。ダイエットだと思って頑張るしかない。駒菌はこの鎧積みをして、9月にそれを逆さまにする天地返しをする。これで主だった作業はおわる。後は収穫を待つだけとなる。


形成菌はこんな簡単ではない
。ホダ木に人工的にその環境を作って椎茸菌を繁殖させるためには、ハウス内で散水作業をする。野菜に水を掛けるのと同じである。最初は毎日朝方1時間程度、ホダ木の表面に椎茸菌が行き渡ったら、今度は3日に一回3時間くらい、と散水の間隔はだんだん広がってゆくが、時間は長くなる。


そして、たびたびホダ木を切って菌が回ってるか確認しなければならない。温度もチェックしなければならない。椎茸菌がもっともよく動き回るのは25度前後といわれている。30度過ぎると、死ぬ危険性が出てくる。40度になると間違いなく死ぬ。

今年は天候不順なので遮光幕を架けたハウス内が30度以上になるということはあまりなかったので良かったのだが、あったかい関東以南ではその管理は大変だと思う。
中にはエアコンをつけたという話も聞いた。形成菌はその年の10月〜11月に収穫予定なのだから、ちょっとした手抜きが大きな失敗につながる。



松林(ホダ場)での本伏せ(鎧積み)です。(上)

木口に椎茸菌が出てきています。これで活着と判断します。(下)