<読書・・・・日本の食と農 その一・・・>

日本海に向く風車群

<読書・・・・日本の食と農 その一・・・>

 野心的な書物に出くわした神門善久氏(明治学院大経済学部教授・農業経済)の著作「日本の食と農」(以下、本という)である。この本は大28回サントリー学芸賞を受賞した。

 神門善久というネームは、失礼ではあるが、農業経済学会ではビックネームではない。私なんか初めて聞く名前である。私の考えとは、相当距離はあるものの「本音」でズバリ現状の食と農に切り込んできている。それを若干ではあるが紹介したい。


 まず、「消費者」ということ、その概念である。氏は「近年の食生活の乱れの背景には、消費者の利便性の追及がある。消費者の利便性への欲求が結果的に安全、安心を犠牲にしてきたという側面もある。」(本、P19)ズバリ切り込んでいる。


 要するに、現在の「消費者至上主義」的傾向は間違っている、と切り込んでいるのである。私も「消費者至上主義」といわれる風潮にはガテンがいかなかった。だから、「生協等の消費者」を「エリート消費者」などと呼んでさげすんでいた。


 消費者の利便性の追及が過剰な消費動向を生んでいるのは間違いない有機農産物にしても、一種の流行である。何が有機であるかもはっきりしない。その有機が健康にいいという保証もない。


宣伝に踊らされた「消費者」がそこにはある。曲がったキュウリにしても結局はまっすぐなキュウリに消費者は目をむく。それは、質がいいとか、おいしいとかとは全く関係のない。
 

また、・・・新聞記事は「有機農産物の宅配が健康や環境に気を配る消費者に人気」という類の記事を見ると宅配にかける流通コストがどれほど石油を消費しているかについて「気を配らない」のが不思議である。・・・(本、P22)


・ ・・「健康や環境に気を配る消費者」ではなく、「環境を壊しても無駄が出ても、自分はいいものを手軽に手にしたい消費者・・・(本、P22)


このほかにも・・・自然志向で人気の天然椰子を使った台所洗剤は極めつけで、これを作るためスマトラ熱帯雨林が焼かれている・・・現状など。縦横無尽に切りまくっている。


 要するに、消費者というのはマスコミの宣伝にどれだけ弱いのか、マスコミや売らんがために仕掛けている、「仕掛け人」のワナにどれだけはまっているか。そして、消費者至上主義というのは、日本の農をどれだけゆがめているのかを「証明」している。

この最初の氏の主張に圧倒された。このほかにも、今流行の「地産地消」はグリーンツーリズムにも疑問を投げかけている。また、食の安心と安全ということにも、科学的評価のない、また、科学的評価が出来ない現状をきっちり説明しないで、スローガン的に使っている現状にたいし苦言を呈している。

<続く>