秋田やまもと農協役員選考顛末記(八)

こうして、再び選任された八竜地区の3名の理事候補は、本部に報告されて承認されたのである。後日、このことを知った職員OBなど仲間数人で「残念会」を開催した。その中で一番の反省点は、我々というか私も含め全くの準備不足だったことである。しかし、それは仕方なかったと思う。当初の「当選」は「ツキ」であったのだから。農協の職員間での下馬評ではAさん、Bさん、Cさんでほぼ確定だったのだが、私はCさんの性格から辞退もあると思っていた。確証があったわけではない。しかし予想が的中して、私に順番が回ってきたのだから、ついているとしか言いようがない。であるから、準備も根回しも皆無といってよい。それにしても、コンプライアンスに違反してまで、私を排除するという、経営側のスタンスには驚いた。


選任制」ということ
農協の役員の選任は、広域合併まえも、またしてからも完全な選挙制であった。議会議員や土地改良区は公職選挙法の対象となり選挙違反は処罰の対象となるが、農協の役員選挙はその対象とならないというので「有名」であった。そのため「買収」なども日常茶判事で今に至っても行われていると聞いている。

ところが、数年前から「選任制」となった。「選挙だと人気投票になる」「地域の実情が反映されない」などの理由からである。今にしてみれば「原子力村」ではないが「農協村」の実力者の影響力をなくしたくない流れがそうしたのだろうと思う。県内の農協はほとんど「選任制」を取っている。
「選任制」というのは総代の中から、選考委員を何人か選んで、その選考委員が協議して、または投票して役員候補を推薦し、それを総代会に提出して承認人してもらうという制度である。
問題点の第一は、「選考委員」は総代や理事及び監事、学識経験者の中から選ばれ、理事会の承認によって組合長が任命することになっている。この時、組合長や経営者側の意向が色濃く反映されやすい。特に女性役員や員外監事等は常勤役員が実質的に選任してしまう。
第二に、地区選出の「選考委員」は少人数(今回の私の地区では23名)であるため、多数派工作が簡単で、場合によっては買収なんかもしやすい。
第三に、一般に組合員は役員に立候補する権利はあるのにも係らず、それが周知徹底されていない。「私、立候補したい」と思ってもどのような手続きが必要なのか、明らかにされていない。つまり、ブラックボックスで候補者の選任がなされるという事態が避けられない。
今回の私の場合のように、一旦、地区の選考委員会で決められたことが、本部により取り消され、本部の意に沿うものが選出されるという不当な結果が例外ではなくなってしまう。「公明正大」「透明性」が全くなくなってしまう。恐らく今回の本部選考委員会の議事録は取ってはいないであろう。
この他にもあるがいわゆる前述したように「選考委員」は「農協村」関係者で占められ、「新しい血」が入り込む余地は小さいということである。今、企業では「社外取締役」等の新たな感覚を取り入れるのが当たり前になっている。員外理事、監事の登用が進んでいると言われるが、それはあくまでも常勤理事の息のかかった人材がそうなるだけの話である。県からの「天下り」とか、連合会職員とか・・・、現実、秋田やまもとの員外監事はこのような関係であった。これでは内部からの改革は恐らく望めないだろう。

写真は大文字草です。ここいらへんではイワブキともいいます。