<今、農協では・・・「専務・・・・だって」・・・>

秋田県奥森吉の杣(そま)温泉(日本秘

<今、農協では・・・「専務・・・・だって」・・・>


退職して「農業者ネットワーク」を創ろうと、県内の仲間にいろいろと声を掛けて回った。そのうちの一人にHさんがいた。Hさんは農協労で長年専従をしていて内部でちょっとしたトラブルがあって、退職した。


 その後、退職金で田んぼを買ったとかで10ヘクタールもの稲作専業農家をしていたようなことを噂で聞いていた。だったら、この「農業者ネットワーク」に誘うことが可能だと判断して、(この「農業者ネットワーク」については後日詳しくアップする)彼の電話番号を探して電話した。



 「もしもし、Hさんですか。昔いろいろとお世話になったKですけど・・・・」
向こうも久しぶりらしく、昔話を講じた。そして、「今、何をしているんですか」と聞いた。「兼業農家だよ・・・・」エッ・・・と思った。10ヘクタールで兼業とはちょっと考えられない。それで「何の兼業ですか」と突っ込んだ。「センムだよ・・・」「センム・・・何のセンム・・・」「ノウキョウのセンムだよ・・・」「農協の専務・・・エッ!!!」


 びっくりした。まさに青天の霹靂であった。「いつの間にか専務に・・・・」と思わず口にしてしまった。


 彼とは、10数年ぶりである。私より一つ上だが、私が農協労の役員をやっていたころの彼にはそんな「才覚」があるとは思わなかった。彼が退職のきっかけとなったトラブルは私も熟知していた。そんな経過から考えても驚かずにはいられないことだった。


 まあ、そんなことはいいとしても私の目的は「農業者ネットワーク」に彼を誘うことなので、何とか日程を空けて話を聞いてくれないかお願いした。彼も昔の私との関係から、無下に断ることもできなかったらしく、一時間くらいなら何とかなると日程を指定してくれた。



 専務といえば全くの経営者の立場だ。労組の専従として団体交渉で経営者とやりあった時の逆の立場になったということだ。私の話は納得はするけど、一緒にやることは彼の性格からして無理じゃないかと思わざるを得なかった。


 指定された日時にJAの役員室を訪問した。10数年ぶりでの彼との対面だあったが、ほとんどと変わりはなかった。腹の出具合、頭のはげ具合・・・まずは私が退職した契機と原木椎茸の件、そして私がめざそうとしている「農業者ネットワーク」についてルル説明した。


 彼は熱心に聴いてくれた。しかし、予想とおり、「あなたの理想はわかるし、すごくいいことだ。しかし、私は無理だ。」そしてはっきりと「私の立場がある。この立場を危うくするようなことはできない・・・」と。


「私はいま、自民党的立ち場にいる。農業についての考え方の相違はないけど、この立場を離れるわけには行かない・・・」


 まあ、彼らしいと言えばそれまでであるが、彼の本音だろう。こんな奴が農協の専務をしているんだから農協はよくなるはずがない、と内心思いながら、これは彼だけの問題じゃなくて、「業界」全体の問題なんだから攻めても仕方はないのだが、と自分を納得させた。


 農協労を退職したときの引きずりがまだあるらしくて、「農協労はいいイメージは持っていない」と再三言い放った。彼は彼なりの手段で「出世」したのだから、それを手放すことはできないのは当然といえば当然だが、最後に「あなた方のネットワークのメンバーに農協を全く利用しない、また、農協の方針を否定するひとがいる。そんな組合員と私がどうして一緒に運動ができようか・・・」と。


 農協は組合員に利用価値があれば利用するのであり、利用価値がなければ利用はしない。組合員にとって利用価値がない農協だから、利用しないまでのことであり、利用価値のない農協の存在自体が問題なのであるということは全然問題にしていない。このことについて、議論してもしょうがないないと思った。彼だけの問題ではないのだから・・・・。


 いずれにしても、変わり身の早さ、立場が変われば人間も180度変わるということを今さながら痛感せざるを得なかった。