<椎茸作業・・・原木椎茸、先輩への挨拶・・・>

鳥海山のハクサンイチゲです

<椎茸作業・・・原木椎茸、先輩への挨拶・・・>



 市町村合併により、一回り大きくなったこの町には私と同じ原木椎茸農家いる。Tさんである。私は彼のことは全然知らなかった。うちの親父も知らなかった。つまり、原木農家同士のつながりというか交流はなかったことになる。


 私のところは、ホダ場が砂地の砂丘地で黒松の松林である。Tさんは内陸の赤土の赤松地帯である。そいうことから、原木椎茸の管理が違う。また、旧町村が違うため技術交流などはなかったのであろう。


しかし、近年ホダ場を必要としない(本当はあったほうがいいのだが)形成菌による栽培が普及してきたため、技術交流の必要性がでてきたのではないかと思う。


 Tさんは60歳をちょっと超える専業農家で、田んぼの6〜7haやっている。そのために主に干し椎茸が主流であるが生もやっている。肩書きは「指導農業士」とあった。農業関係者ならこの肩書きで彼がこの地域の中でどのような立場の人間かわかるだろう。



 初めての顔合わせだというのに話は尽きなかった。一番の悩みは原木の調達方法と原木椎茸の販売ルートであった。私はJA時代販売の現場を経験してきているので、「営業」ということを知っている。しかし、昔からの農家だと販売方法とかマーケテングなどあまり理解できていない。


自分で売るということの経験がないからである。特に、今はやりつつある「ジャンボ椎茸」のことでは彼も相当力を入れているのでどこでどのように売るか、数量がないだけに、また、調理マニュアルが広まっていないので、例えば生協に売り込みをかけてもそれに対応するだけの質と量が確保できるかということで悩んでいた。私はマーテテングということを提案したが、そのノウハウがないので理解できないでいた。



 また、原木の確保には私の場合昨年の今頃から、様々なツテを探してその確保に躍起になっていた。Tさんはそのキャリアから様々な人を知っていたので、その情報もまたすごかった。彼の存在を知っていたらあんなにまで苦労しなかったと思ったりした。


しかしながら、前近代的な「山師の世界」には閉口したことは共通していた。

 それから、菌床椎茸については統計数字から言うと市場流通の90%が菌床椎茸だという事実はあるものの、二人で「本物の椎茸ではない」と悪口を言い合って笑ったが、実際味もそして安心安全性からいっても・・・本物は原木だとお互い慰めあった。 


県内には「スーパージャンボ会」というのがあって私もいつの間にか会員にされていたが、一個100グラムもする原木椎茸(通称「ジャンボ椎茸」といい、菌興115号という種菌を使う)の栽培農家の集まりで県内に10名近くいる。


私もこれが菌床と差別化する切り札だと思っている。この「ジャンボ椎茸」の販路を確立することが大きな課題であるということも一致した。そのためには、その10名近くの「スーパージャンボ会」で協力しながら量的にも確保することが重要なのである。


 私としては、会員制の直売方式を将来的には実現していきたいと思っているが、そのためには、当面の経営を安定させなければならない。そのためには市場流通も避けては通れない課題だと思っているが、それには「ジャンボ椎茸」が大きな武器となる。 


二人は、小雨の降る昼間、延々と2時間語り合っていた。酒も飲まずに・・・・