<読書・・・「生命と食」(岩波ブックレット)その二・・・>

鳥海山のハクサンフウロです

<読書・・・「生命と食」(岩波ブックレット)その二・・・>



つづいて、これが人にも感染することになりますが、日本では世界にも稀な全頭検査の厳しい体制を作りました。解体される牛はその前に脳内の「異常プリオンたんぱく質」をチェックし、続いて「特定危険部位」の除去です。


これについてはアメリカや業界団体等から厳しすぎるとの様々な批判がありました。さらには、肉骨粉の使用禁止です。日本ででは、豚や鶏、羊や魚の餌にするのも禁止されています。それとともに、牛の戸籍ともいえるトレーサビリテーの実施です。その牛肉がどこで飼育され、生産されたか現在では一目瞭然となっています。


これに対してアメリカはどうか・・・です。アメリカでは全頭検査に当たるようなチェックは何もしていません。抽出した少量のサンプル検査のみです。アメリカの畜産規模は日本の20倍以上あるので、日本で発見された狂牛病牛は35件ですから、統計的に言えば数百件見つかることになります。


検査していないからです。また、「特定危険部位」についてはアメリカでは、「30ヶ月」以上の牛だけにすればよいことになっています。日本では食品安全委員会が示したデーターにより、「20ヶ月」以下は安全ということにしました。


それによりアメリカ牛も20ヶ月以下なら、検査なしで輸入がOKと再開されました。しかし、20ヶ月や30ヶ月は何の根拠もないことだと筆者は言っています。要するに病原体に感染されれば、「特定危険部位」にそれが「集中的」に蓄積はされますが、そこだけにしか病原体がないわけではないのです。


「集中的」に集まるだけであって「散発的」には他の箇所にも集まる可能性がなくはないのです。実際に21ヶ月や23ヶ月の牛の感染例も見つかっているのです。科学的な議論が詰められるよりも政治的な決着がつけられたのです。


それにアメリカでは、肉骨粉は豚や鶏、魚の餌などに使われるのは認められています。日本とアメリカではこのほかにも食品の安全性についてのハードルにだいぶ格差があります。


貿易摩擦になっていますが、日本が実際行っているハードルにアメリカのそれを合わせてくれ、といっているのですから、ダブルスタンダードでもなく本来貿易摩擦になりうるはずもないのです。アメリカの圧力に屈しているというだけのことです