「朝日」の社説に反論す

海岸沿いの断崖にスカシユリが咲いてい

<農業問題・・・・「朝日」の社説に反論す・・・>



 09年6月9日付けの朝日新聞の社説に農政改革 先送りする余裕はない」という社説が載った。またまた世論誘導的な誤解を生みやすい社説である。


 「食料自給率(カロリーベース)は40%と主要先進国の中で際立って低い。」のと述べながら、「日本の農業をここまで弱らせた最大の原因は米価を維持する目的で政府が続けてきた減反政策である。生産者保護の名の下に計7兆円もの税金をつぎ込んで生産を減らし、消費者に高い米を買わせる一方、コメ作りへの意欲と工夫を農家から奪った。」と主張している。


 あたかも食料自給率が下がったのは「減反政策」が原因であるようなニュアンスである。食料自給率が40%というのは減反政策が原因ではない。農水省発表の「品目別供給熱量自給率」(2005年版)を見てみるがよい。


 発表年度は古いがコメは95%の自給率を維持している。当然である。国産米が余っているのだから。小麦が4%、油脂類が3%などが足を引っ張っているのである。最初にこのことをはっきりさせなければならない。



 次に決定的なのは、減反政策が農業を弱らせたのではない。論理のすり替えがここにある。全国各地にこのように田んぼが広がったのは、戦後の食糧増産政策によってであり、それを支えた食糧管理制度(以下、「食管」という)があったからである。


 そしてその食管が「生産費所得保障方式」で農家の再生産費を補償したからである。つまり、コメの値段が農家の労働を正当に評価し、それによってコメを買い上げたため、農家もコメの生産を拡大したのである。



 逆の意味で言えば、社説がいう、「日本の農業をここまで弱らせた」原因は、現在のコメの値段が再生産費に全く届かなく、最低賃金にも全く届かない時給300円に届かない額になっているからである。


 それによって、生活ができない、後継者はいない、耕作放棄は起こる、農村人口は減る、限界集落は生じ様々な社会問題へと波及しているのである。現場を知らない本末転倒の議論である。


 それにもう一言付け加えるならば、「7兆円の税金」をつぎ込んで何が悪いのか。この『7兆円』は単年度ではない。


過去の累積だと思うがその数字の出所は気にしないとしても、国民の食料の安定供給のための経費として、先の単年度の「2兆円」の補正予算と比して何が問題だというのか。主要先進国アメリカは日本の10倍、イギリスも日本の4倍の補助金を出しているといわれています。(つづく)