<今、農協では・・・隣の農協の不祥事・・・>

家の庭に野菊が咲き出してきました

<今、農協では・・・隣の農協の不祥事・・・>


<地元ローカル紙に投稿し掲載される>


 農協を退職しても農協の情報は入る。椎茸の植菌作業が終わり暇になったから元同僚は友人たちに近況報告したりしている。


そうしているうちに隣のJAでの不祥事が新聞発表された。今年の二月ころ、不祥事があったらしいという話は当該JAの職員から聞いていたが結構な不祥事ということらしい。


 不祥事の当事者は女性課長である。昨年までLAでその当時のお客さんの満期共済金に手をつけたということだ。満期共済金を振り込んだ通帳を5年間も預かっていたとのこと。通常は考えられないことだが、それを「通常のこと」としてやってしまうから不祥事となる。


彼女はLAとして経験もあり、「優秀」であった。全県でもトップ10には入っていたのではないかと思う。だから、「女性課長」に抜擢されたのだとは思うが、彼女も昔労組の執行委員をやっていたこともあり私とは旧知の間である。平成16年からの「横領」で昨年、わがJAであった不祥事も平成16年である。


 昨年のわがJA(退職してしまったんで「わがJA」というのにはちょっと抵抗感があるが、組合員ではあるので使わせて戴く)で不祥事が起こったとき、労組の委員長として全職員向けに「声明文」を出そうとしたが、執行委員会の承諾が得られなかったのでボツにしてしまった。(労組員だけには配布したが・・・)しかし、今は全くのフリーの身である。何をどうしようがかまわない・・・。


 今更、職員でもないのに全職員向けにとはできないこともないのだがやりづらい。考えて地元の「北羽新報」というローカル紙に投稿することにした。ローカル紙と言ってもこの地区では一番の発行部数があり、農家にも一番よく読まれている新聞である。


 掲載されるまでは数日かかると思ったが、なんとファックスした翌日と翌々日に二回にわたって無修正で掲載された。私には何の連絡もなく・・・・


 以下はその全文である。相当長いが我慢してほしいと思う。


 なお、これから9日間ほど外国旅行に出るのでブログはチョット休ませていただく。その意味もあって、長文ではあるが・・・・勘弁してもらいたい。



<JAの不祥事を考える>


 またもやJAで不祥事が発生した。それによってJAの信用がまたもや失墜した。不祥事の職員に最も責任はあることは確かだが、それだけを指摘していては問題の解決にはならない。先月までJAに在籍した元職員として、その背景や問題点を二、三提起してみたい。


 JAでの不祥事はその定義にもいろいろ問題はあるが、「秋田やまもと」と「あきた白神」が変則的な合併をして以来、それぞれ毎年のように起こっている。


 報道によるとあきた白神では16年から今回の件まで6件発生し、秋田やまもとでも私の知る限り合併以来、実質的な不祥事と推定される件も含め6〜7件発生している。要するに総代会等で最大の経営課題と標榜されていながら、結果的に防ぎきれていないというところに大きな問題があるとおもう。


 不祥事の内容を分析してみると、過去のどれをとっても複雑な手口とはいえない。今回の白神における満期共済金の横領や昨年のやまもとの売上金の横領など現場の職員にしてみれば必ずばれる単純な手口である。問題はこのような単純な手口を監査などですぐに指摘できないのか、ということと、すぐばれるとわかりきっていながら職員がなぜするのかということである。

 第一に監査体制である。JAには監事が役員として選任されている。その監事による監査(内部監査)と全国監査機構による監査(元はJA中央会による監査)、それに県による検査(外部監査)が年に数度ある。


 結論から言えばそれは機能していない。不祥事の発生でそれが証明されている。今回のあきた白神も昨年の秋田やまもとも平成15年からの横領である。それまで監査部門は何をしていたのかということになる。


 内部監査はJAの監事(役員)といういわば「素人」による監査である。常任幹事など職員上がりの監事もいるが、それとてJAのすべての業務に精通しているわけでない。ご存知のとおり、JAは民間で言えば、銀行、保険会社、商社、それに営農指導などさまざまな業務が複雑に入り組んでおりそれだけに経理システムも複雑になっている。


 すべての業務に精通している職員はほとんどいないといってよい。全国監査機構や県の検査は主に不良債権の評価などが中心で現場での監査等はほとんどないといってよい。監査(検査)マニュアルはあるがそのとおりの検査では「泥棒に泥棒をしているか」と聞くような内容だと聞いている。


 第二には職員体制の問題である。監査体制が不備だから不祥事が発生するわけではない。職員が自らの業務に対するインセンティブがしっかりしていて、チームワークでそして相互牽制の中での業務だったら不祥事は発生しにくいといわれている。


 昔はよく職員同士で酒を飲んだ。そして、先輩から後輩へと協同組合の職員としての心構えを再三詰め込まれた。職員が一番嫌がるといわれている共済推進にしても先輩が後輩の分を手当てしたり同僚としてチームとして業務が行われていた。


 ちょっと変な仕事ぶりだったら、先輩や同僚から注意や警告されたものだった。そこには常に相互牽制があった。広域合併後は減員に次ぐ減員で職員間の「飲む」機会や議論する場は少なくなった。また、毎年のように中堅職員の中途退職が目立つJAもある。


 チームでの業務が減って単独でのそれがふえた。個人の業務が数値化され、そしてノルマ化され「自己責任」とされた。仕事に対するプレッシャーは相当なものになり、夜も寝られないとして、「うつ病」と診断された職員も少なからずいる。


 秋田やまもとではその成績がもろに給与に反映された。自分だけの成績が最優先され、同僚やチームでの実績は脇に追いやられた。そこにはチームとしての業務は少なくなり、当然相互牽制も必要がなくなった。


 昨年の秋田やまもとでの不祥事を起こした職員も今回のあきた白神の職員も私は知っているし優秀といわれていた。弁護するわけではないが、彼らが仕事熱心であったことは誰でもが認めると言ってもよい。


 このような状況で職員は疲弊しきっている。それが言い訳になるはずはないのだが、不祥事を起こした彼らだけでなくJA職員の共通認識みていい。そのため、業務に対するインセンティブが低下し、また、その内容が組合員のためというよりはJAそのものの経営を守るための方向に変化しているため、合併前と違って仕事に対する情熱が保持できないという現状がある。つまり、不祥事が発生しやすい環境があるということである。


 今回の不祥事を契機として今後、管理やチェック体制が厳しくなるだろう。いくら管理やチェックを厳しくしても、不祥事はやる気にさえなればそんなに難しくないということは今回の5年間も不祥事が発覚しなかった件を見れば明らかであろう。それは現場の職員なら誰でもが知っていることである。


 不満を持ちながら、そして疲弊しきっている職員の気持ちが不祥事の動機、温床であると言いたいのである。昨年のJA秋田やまもとで不祥事を起こした職員は仕事でむしゃくしゃしていた、とその理由を述べていたと聞いた。


 また、同JAでは、労組に対する不当行為の判決を受け入れてもそれに対する謝罪は拒否してきたし、不払い残業の件で毎年のように労基署から指導をうけ、それをコンプライアンスの不備、経営者の責任としては処理していない。職員の不満は蔓延している。


 つまり、県などの指導機関に対しては「コンプライアンス遵守」の型通りの姿勢をとりながら、根本から根絶の体制はとってはいないと現場職員は敏感に感じ取っている。


 不祥事のたびに関係職員等は処分されてきたが、経営者の処分は不祥事の防止が最大の経営課題と標榜しながら一人当たりの金額にすれば、昨年の秋田やまもとでおおよそ20数万円程度、あきた白神はそれより低く20万円にはいかない程度だと思う。


 これを多いとみるか、少ないとみるかは議論のあるところだと思うがそれぞれ1000万円近い役員報酬を受けている経営者である。このような経営体質を問題にしないで、不祥事の根絶は難しいと思わざるを得ない。



 そうはいっても、JAはこの混迷する農業状況の中では社会的にも大きな役割を果たしている。前述した経営体質については職員や農家組合員がもっと大きな声を上げて改善させていくべきだと思うし、これを機会に議論を巻き起こさなければならないと思う。この3月まで在籍していた者としては取り当たっては次のことを提言したい。


 第一に、監査部門が主導して職員を活性化を図るため職員の意見を聞き自由闊達な議論の場を作ることである。そしてそれを定例化することである。その結果を理事会等に報告し、職員の意見や不満を理事等が共有化することである。経営者は聞くだけでいい、辛辣なこと言われても黙って聞くという度量が必要である。


 そして、同僚や仲間同士で自由な雰囲気で議論できる職場風土を作ることだと思う。現状は「上意下達」浸透しきっている。末端職員は自分が何を言っても無駄だと思っている。中間管理職も何か起こればすべて「管理職が悪い」で片付けられ「経営者は何のためにいるんだ・・・」という声も結構聞いた。


 第二に、職員の増員である。不祥事対策には現場の職員による相互牽制が最も有効だと思う。ひとつの業務を複数で行う体制作りである。幸い両JAも経営的には総代会資料を見る限り増員するだけの余裕はある。今まで、職員の減員によって収益を生み出し、経営を安定させてきた経営方針を転換させるべきだと思う。



  最後に現場の職員がどのような状況になっているかを把握しないでどんな対策を打ってもそれは形式的なものに終わってしまうと思う。私が在籍していたときも組合長が現場に来るのはせいぜい月に一回か二回である。来ない月もある。これで現場を知っているではちょっと感覚がずれている。


 今度トヨタの社長になる人が「現場現物に一番近い社長になりたい」とあの図体のでっかいトヨタでさえそのような認識である。200人足らずの現場の実態を知らずして最大の経営課題である不祥事の撲滅はままならないと思うのは私だけだろうか。