<椎茸作業・・・原木の調達(四)・・・>
<椎茸作業・・・原木の調達(四)・・・>
手づるを使っていろいろ探した。しかし、時期が遅い。通常は11月、12月に伐採しているはずでほとんど予約されていた。いい返事は来ない。お袋からはさんざんと言われた。
「それみたことか、最初から1万本なんてできるはずがなかったんだ・・・」鬼の首を取ったように夕食のたびにグチュグチュいった。腹の中では「コンチクショー・・・」と思いながら、無視することに決めた。
そして、いろいろ考えてみて、地元のローカル紙に広告を出すことにした。「椎茸の原木買います」の三行広告である。どれだけ効果があるかはわからない。
親父にもお袋にも何も言わなかった。言えばまた何かにといわれるからである。連絡先は携帯の番号だけ。だから、広告が載った日からは携帯は離せない。着信番号が登録されていない番号だったら恐らく広告についての問い合わせと思わなくてはならない。
広告が載った日出勤した。広告には携帯の番号と名字しか載せていなかったが、同僚から「これはお前か」と聞かれた。びっくりした。皆、大体のことはわかっているんだなと思った。まだ一万本には足りないが、少なからずの原木が家の前に積んであるから、これが勤めながらの仕事ではないということはわかる。それが口コミで伝わっていけばおのずと結論に導かれる。
だから、隠し立てしないでおおっぴらにする決心をした。辞表を出すのは就業規則で14日前でいいのであるが、同僚には早めに明確にしておいた方がいいと思った。
広告の効果があった。2件から問い合わせがあり、その二件ともものになりそうなのである。そのうち一件は職場の後輩の叔父に当たる人だった。また、私の隣の家の人とは高校の同級だったりして・・・・。もう一人は、現在の支店長と同じ集落でいろいろあたってみたら、親父の従兄弟の親戚でもあった。世間って狭い・・・。
この職場の後輩の叔父に当たる人はこれが面白いひとで昔運送屋をやっていて、それを倒産させて仙台に逃げたのだが、運送屋をやりながら椎茸の原木のブローカーをやった経験があるので、県の中央部に雑木林を買ってきこりをしながら、椎茸の原木の取り扱いもしているとのこと。
だから、原木については半ば素人の私より詳しい。隣の高校の同級生の家がわかっていたので、電話の後で来てもらった。いろいろ話をした。話好きで面白い話をしていた。私はただ聞くだけであった。
それによると、一人で仕事しているとのこと。いや正確に言えば女性と二人である。その女性は妻ではないとのこと・・・・どういう関係かは聞かなかったが、それ相当の関係であるとのこと。その女性も一緒に来た。50代くらいでテキパキとして愛想もいい。
私の松林のホダ場も見たいというので案内してやった。ちょうど自然子の出始めだったので、黄色い声を上げていた。椎茸のホダ場にこのような平地の松林は少ない。少ないというよりほとんどない。皆、斜面でホダ木の運搬には相当苦労している。ところが私のホダ場は平坦で、砂地なので軽トラで松の間をぬっていけるのである。これにもまた驚いていた。