<椎茸作業・・・原木の調達(三)・・・>

業界用語では「春子」といいます。

<椎茸作業・・・原木の調達(三)・・・>


 そうこうして、口約束ながら、1万本の目処がついた。しかし、それはついただけである。


12月の中旬ころから原木は入り始めた。Aさんは二トンのダンプで片道2時間の道のりを運んでくる。おおよそ300本である。
ダンプだから、私の家の前の空き地に「ド〜ン」と空けていく。まさか重たい原木を一本一本積んでおいていってくれ、とはいえない。売ってもらう立場である。


数日中に次の300本が来るからそれまで積並べておかなければ、空ける場所がない。私はまだ退職していなかったので、土日にまたがっていなければ朝か夜の仕事になる。12月の18時頃は真っ暗である。


 300本の原木を積み上げるには、ほぼ一時間かかる。夜だと車のライトを照らしての作業となる。寒くても汗だくになる。きついがストレス解消には絶好である。汗をかいてすぐに風呂にないって、ビール・・・・となる。格別である。翌日の筋肉痛はやむをえない。


 Aさんの原木は順調に入ってきた。Bさんとは4000本の約束をしていた。これも2トンダンプである。原木が細めなので600本積んできた。細めと入っても明らかに積載オーバーである。私からそのことを指摘する筋合いではないが、雰囲気が違っていた。


二回目も12月下旬に600本積んできた。この調子だと4000本は間違いないと思った。年内はこれで終わりと聞いたので、請求書をもらって早速送金した。


 年が明けて1月の下旬。連絡がないのでどうしたのかと連絡を取ったが、雪が厚くて林道に入れないという。私のところはほとんど雪はないので山地ではあるんだろうと想像するしかなかった。


2月の中旬、どうもおかしいと思って、再度連絡を取った。そしたら、機械が故障して搬出できない、との返事。機械はいつ修理できるのかと聞いたら、わからない、という返事。「えっ・・・やられたな・・・」と思った。約束が破られた瞬間であった。


 後でいろいろ調べてみたら、地元では「あの人は信用できるような人ではない・・・」という評判で恐らく、単価の高い業者に流したのだろう、という話である。腹が立って仕方なかった。まさに「山師」といったところか


 冗談じゃない。約3000本の穴をどうやって埋めるのか・・・本数を少なくしてもいいが、それだと収入も少なくなり採算が取れなくなる。何とかして穴うめをしなければならない。


 Aさんにも5000本お願いしてあったのだが、4000本くらいしかならないだろう、と連絡が来た。その程度だったら仕方がない。Cさんは1000本の予定で850本はいった。合計で4000本足りない。もう2月の中旬。3月から植菌作業にはいる。原木を確保しなければ最初から計画が狂う。

 職場では私が退職するということは皆うすうす気づいているようだが、私からは「正式」にはなんともいってはいない。LAだからこの時期ほとんど仕事はないから、仕事をそっちのけにして、原木の確保に集中せざるを得なかった。