<読書・・・・反貧困(「すべり台社会」からの脱却)・・・>

日本海に沈む夕陽です

<読書・・・・反貧困(「すべり台社会」からの脱却)・・・>


 この本は、読み応えがある。著者は湯浅誠氏。岩波新書で約220ページ。今流行の「ワーキングプア」を題材としたものだと思ったが、確かに「ワーキングプア」が中心なんだが、



 現代の新自由主義社会の矛盾点の最先端で「ボランテア活動」をしていて、その実践にもとづいて、なおかつ情勢分析が明快で、反権力の意味と構造が理解できている・・・・それもそのはず、「東大大学院博士課程単位取得退学」と奥付にはある。



 ホームレスや生活保護などの貧困問題を何の報酬らしい報酬ももらわず、「世のため、人のため・・・」の活動が、それも夜も寝ずに駆け回り、役所とケンカしたり、ホームレスの相談相手になったり、生活保護手続きを代行したり・・・・何故東大卒がこんなことを・・・・


 と我々下衆はかんぐりたくなる。我々も労働組合活動はほぼボランテアなのだが、彼の「ボランテア精神」は我々の比ではない。まず、これには東大卒であろうが、何であろうが頭を下げずにはおれない。



  彼が、この本のなかで一番主張したいのは、現在の新自由主義に彩られた社会は、まさに「すべり台社会」であって、一度落ちたら、二度と這い上がれないシステムになっている。社会のセーフティネットが二重にも三重にもほころんでいて、政治を変えなきゃなんともしがたい・・・・ということあろうと思う。


 卒業しても仕事がない。あっても派遣・・・そのひどい労働条件で怪我でもすればそく首、労災なんか認めてくれるはずもなく、また、手続きの仕方さえわからない。


 そうしているうちに、家賃は払えなくなり、追われ、「ネットカフェ難民」とか「ホームレス」になる。

 生活保護の申請方法さえわからなく、わかって福祉事務所へ申請に行ったとしても、そこでは「扶養してくれる親族がいるだろう」とか「もっと働けるだろう」といって追い返される・・・・


 そして、どこへ助けを求めたらわからなくなって著者が組織する「もやい」などにたどり着く・・・・。これが「すべり台社会」の現実である


 そして、ソコから抜け出すためには「溜め」が必要だという。その「溜め」とはなんなのかはこの本を読んだほうがいい。


 何れにしても、彼の実践から生まれたこの本は、難しいことも書いてあるけど、自分の息子達がちょっと失敗すれば転がり落ちるかもしれない、いや、落ちるようになっている社会のシステムについて考えさせられる。


 実際、わたしの家族だって、私が病気で仕事が出来なくなり、収入がなくなったら、この「すべり台」を転がり落ちるという可能性が大きい。


 難しいことも書いてあるけど頑張って読んで欲しい本である