<農業問題・・・農業の役割・・・>
<農業問題・・・農業の役割・・・>
チョット、難しい話になるが、これも農業問題をライフワークとする小生にとっては避けて通られない話。少々ご勘弁願いたい。
農業には大きくいって二つの役割が存在すると思う。そのひとつが国の食糧を賄うという事。もっと正確に言えば、その国の基礎食糧、カロリーベースとした国民の食糧を自給するということである。
人間一日に大体2200キロ〜2500キロカロリーが必要とされている。現在、そのうちの61%が外国産食糧ということである。
自国の食糧を自国で賄えないで独立国家といえるかという議論もある。小泉内閣で典型的に表れた「新自由主義」という考え方は、すべてを市場原理に任せておけば、最も合理的なシステムが出来上がり、それがベストである、という考え方である。
つまり、日本の食糧も外国と仲良くして外国から輸入しても何の問題もないじゃないですか・・・ということである。日本は貿易黒字でその金余りのお金で世界中から買い付けることが出来る・・・・と。
それは、金がない国は(貧乏国)は滅びてもしかたない。「優勝劣敗」という考え方である。私がよく言う成果主義もその延長線上にある。
それに反対するアンチの考え方が、「食糧主権」という考え方である。それは、フランスの農民組合などが綱領として取り入れている考えからであって、自国の基礎食糧は自国で生産し、そして貿易を制限する権利も保有する。
これは、主権国としての当然の主張であり権利なのであるが、今のWTOはこれを認めていない。アメリカの農産物の輸出戦略と一体しているからである。(これはWTOの前進であるガットの設立契機を考慮すれば一目瞭然である)
しかし、反新自由主義や反WTOの考え方から、また、世界から貧困をなくそうとする勢力(NPOなど)から、全世界的にこの食糧主権という考え方は広がりつつある。現在の発展途上国にその食糧主権という考え方が広がらないと貧困はなくならない、といっても言い過ぎではない。「自爆テロ」だって根源には貧困が存在しているのであるから。
他のもう一つは、環境保全という考え方である。これは、二酸化炭素、地球温暖化の問題でいま最も熱い問題である。自然の原理に任せておけば、農業は二酸化炭素を排出しない。逆に吸収するのである。
ところが、農業にも経済的論理が優先されてきて、熱帯雨林を開墾してそこにバイオエタノールの原料となる作物を植える、というのである。
それでも工場を建てるよりはいいかもしれないが、環境保全より儲けを優先するという考え方がこれもまた、新自由主義の考え方である。ハゲタカファンドがバイオエタノール精製工場にどんどん投資しているという報道がマスコミをにぎわしている。
儲けの対象には、それがどんなものであっても投資するという、ハゲタカファンドの本性である。環境保全なんか関係ない。
農業には「非経済的価値」というものがある。金銭では計りきれない価値のことである。この価値を国がいい出したのは、ガットウルグアイラウンドのおけるコメの輸入自由化交渉に際してである。
いわゆる水田の国土保全機能について言及した。水田は、河川のダムとしてその機能を金銭に換算すれば何千億という価値がある、ということを発表した。それは、水田の「非経済的価値」を認めたことになる。
認めたくなかったことを農業者や環境保護運動家の圧力等によって、国のスタンスも農業の環境保全機能を認めざるを得なくなってきた。しかし、このことをWTO交渉で主張することには遠慮がある。アメリカがそれを認めないからである・・・というよりは、そのような議論がWTOの議論としては相応しくないからである。
これを解説すると一段と難しくなるのでやめるが、資本主義という市場原理万能の社会システムが、二酸化炭素の排出を止められず、環境に大きな負荷を与えていることは間違いない。