<読書・・・「世界がキューバ医療を手本にするわけ」3・・・>

秋のススキが綺麗です

<span style="font-size:medium;"><読書・・・「世界がキューバ医療を手本にするわけ」3・・・>



つづいて、キューバの「医療外交」についてです。前回述べた「奇跡の手術」についてです。キューバの医療の先進性については、紹介してきた通りだが、その先進性を自国のものだけにせず、発展途上国の共有財産にしようという試みがなされている。


これが、ラテンアメリカカリブ海地域の視覚障害者450万人にたいする「奇跡の手術」という事業だ


具体的には、ベネズエラチャペス大統領が石油収益の一部を負担し、キューバが医療技術を負担してこの事業が可能になった。眼の手術はラテンアメリカカリブ海地域の15カ国からこれまで17万人が手術を受けた。渡航費用から滞在費、医療費も一切無料という我々にとっては、考えられない事業である。



「医療外交」はそれだけではない。1990年にはキューバ医師約46000人が60カ国に派遣され、活躍している。


それだけではない。キューバ国際緊急援助隊は昨年のジャワ地震津波による大災害にも活躍した。日本やイタリアなど世界各国から駆けつけた援助団は二ヶ月過ぎると次々と帰途に着いた。


ところが、キューバの医療チームは135人からなる医療隊を派遣し、いまなお現地に踏み留まっている。2005年のパキスタン地震でも同様に活躍した。しかし、こうしたキューバの活動は、国際メデェアからほとんど無視されている。



アメリカでは05年8月、「ハリケーン・カトリーヌ」の直撃を受けたニューオリンズは8割方水没した。キューバは「米国はキューバを経済封鎖している敵対国だが、それは人道援助とは関係ない。


犠牲者を救助するため、医師団を派遣したい。」と申し出た。そして1586人の援助医師団が組織され終結した。しかし、当然のことながら、米国はキューバの援助申請をはねつけた。



このような米国は、ご存知のように、キューバを経済封鎖している。毎年、其の経済封鎖解除の決議が国連に上程されているが、14年連続でそれが採決されている。賛成184カ国、反対国は米国、イスラエルマーシャル諸島パラオの4カ国だけである。(2005年国連総会で)


そんなこともあって、カストロキューバが議長国を務め、2006年9月にハバナで開催された非同盟諸国会議では、大きな役割を果たした


軍事力を背景としたアメリカのパワーがトーンダウンする中で人道援助を通じたキューバ外交が着実に成果を生み出している。


しかしながら、キューバの庶民の生活は苦しい。『スペシャルピリオド』以来、インフラは半分は機能しなくなった。GNPもアメリカの13分の1に過ぎない。



医師の給料だって、外貨を得ることが出来るタクシー運転手よりも少ない。そのため、物質欲に駆られた医師などは、すでに600人近く亡命しているという。


個人主義、利己主義、物質主義が広まり、また、革命を知らずに育った若者の退廃文化が蔓延し、犯罪や麻薬に走るものも少なくないという。「革命の倫理が内部から瓦解する」とカストロは嘆いているという。そして、教育こそが革命の倫理観をはぐくむ唯一の方法だとしている。


このほかにもイロイロなことが書かれている。そのごく一部を紹介しただけだが、現状の負の部分をもっとさらけ出してもよかったんじゃないかと思う。しかしながら、この本世読んで、キューバ観が変わるのは私だけではないだろう。<了>