<今、職場では・・・「不良債権回収業」3・・・>

再度、イチゴの花です

 <今、職場では・・・「不良債権回収業」3・・・>

裁判手続きとは、要するに借りた金を返せ、という判決を取ることである。専門用語では「債務名義の取得」という。この債務名義を取得すれば、強制執行ができる。競売や差し押さえである。



債務者側にすればたまったものではない。そこで、どうするかといえば、農協の各地区にいる理事に頼み込むことになる。何とかならないかと「陳情」するのであるがその理事とて、なじみだったり、自分の支持者であったりすれば、ムゲに断ることは出来ない。


そして、その理事から、常勤の組合長や専務に話がいく。常勤というのは自分の経営政策をなんとかして承認してもらい、自らの経営手腕を発揮したいと思っている。


しかし、それに対しての最大の関門は理事会なのである。理事会で承認されなければ、経営手腕も何もあったものではない。それに、常勤の組合長や専務は三年に一回、理事によって改選される。その支持も得たいために、理事の話を聞かざるを得ない。要するに理事会対策と改選の票を意識せざるを得ないのである。


 だから、事務屋として粛々と作業をしていると突然、「チョット待て」的なニュアンスでさおが指される。それも露骨に「待て」などとは言わない。「○○さんの件だが、○○さんの話も十分聞いてやってくれないか・・・」という具合に・・・。それも上司の常務や部長といった上司を通さずに直接担当課長にくる。


課長はだいたい来ることはその案件によって情報を得てあるのでわかる。そうすれば、常勤の顔もチョットは立てなければならなくなる。一回か二回ぐらいは話を聞く機会は設ける。しかし、そのことによって取り立て方針を変えることはまずない。


一ヶ月か二ヶ月先延ばしになる程度である。なおかつ、常勤から話が来ることがある。そうすれば、部長や常務に報告し、彼らに「盾」になってもらう。それしかないのである。何のために役つきで高い給料をもらっているか・・・ということである。



 この「チョット待て」は案件によって全然違う。すべて一様ではない。たまには、理事会で「この取り立て方はダメダ」と直接指摘されることもある。そうなれば、それは我々下っ端の問題ではなくなる。常勤の判断である。常勤が変な判断をすれば、不良債権の解消という「大義名分」な反することになる。



これが、「農協的」といわれる所以である。弁護士によく言われる「農協って甘いね・・・」と。銀行なんかこんなことは絶対しないといっていい。何しろ「利潤」を求めるのが仕事であるからである。そのためには「ハゲタカ」でもなんでもする。


 とにかく、裁判をするということは債務名義を取るということである。これさえ取ってしまえば、いかようにも処理できる。これを取ってしまえば、「チョット待て」もなかなか来ない。来たとしても「裁判で決まったことであるから」と、突っぱねることが出来るかである。
(つづく)