<お葬式④・・・>

これも満開の菜の花

<お葬式④・・・>


そういうことで、葬式の最大の関門「序列」の問題が出てくる。式の席順と葬列の順序である。


今回私は、ノートパソコンを持ち込んで仕切った。席順や式次第の細目等マニュアルはあるが、その通りに行かないことはわかりきっている。何回も書き直すよりエクセルでメモった方がよっぽど効率的である。

初出には必ずクレームがつく。世の道理で、早速先輩からクレームがきた。「ちゃんと書いておかないとすぐ消えるゾ・・・」と。意味のわからないクレームだったが、「わかりました」と曖昧な返答はした。が、そのまま最後まで使用した。


 案の定、席順は何度も書き直された。エクセルの効果は一目瞭然だった。それに、口頭での指示は忘れたりするから、すべてプリントアウトしての指示に変えた。故に連絡ミスがほとんどなかった。それ以来、先輩からのクレームはなくなった。逆になんかあれば、「パソコンもってこい」ということになったのである。


 遺体が自宅に到着して次の日には入棺、出棺、火葬という段取りになる。入棺というのは棺に遺体を入れるということだがこれもまたひと悶着・・・。

 というのは、ご存知とは思うが、遺体は腐敗する。腐敗すれば異臭を放つ。その腐敗を防ぐために葬儀屋が気を利かせて、ドライアイスを布団の下に設置する。それでも異臭はすごい。入棺は故人の親子兄弟がする。


 しかし、いつも近しくしているものならいざ知らず、何十年ぶりの対面という場合も少なくはない。それに当事者の「名代」として出席を強いられている人である。そういう人が、「死体」と「異臭」に違和感がないはずがない。

 嫌がって遺体になかなか近づかない、いや近づけない、といったほうが正確かもしれない。そのような状況だから、なかなか前に進まない。そうすれば、「御意見番」からまた「渇」がはいる。「セ〜〜ノ・・・」で持ち上げようやく入棺。側で見ているものにとっては気の毒というしかない。


 この入棺の儀式は坊さんがお経を唱える中で行われる。これにも意味があるのだろうが、お坊さんから親しく聞く機会があるわけでもない。

 火葬はご存知の通り、遺体を焼却するということである。だからおごそかに行われる。一連の葬儀過程の中で最も大事な儀式という人もいる。「人間死ねばゴミになる」と名言を吐いた検事総長がいたが、灰となって大地に帰る。まさにその通りというしかない。


 遺体は何千度という炉の中で焼かれる。その間約90分。坊さんのお経の中で「ゴ〜〜〜」という燃焼音が不気味である。この間代わる代わる焼香するだけで何もすることはない。暇で仕方ない。かといって何かをするわけにもいかず、ただ神妙に、おごそかに・・・。苦痛といわれても仕方ない。


 通常は誰かがすすり泣きするものであるが、今回は誰もいない。皆、覚悟ができていたためであろう。しかし、焼却された遺体が排出されて、お骨拾いをするときはさすがにハンカチが動く。

 
 変わり果てた姿に感、極まるといったところか。これも何回も慣れた人だと流れに沿って拾うことになるが、初めての人はやはり気持ちが悪い。頭蓋骨の形状がそのままになっている場合もある。

 
 火葬場の職員がこれは○○骨、これは○○骨と説明している。それまでやるのか・・・不気味な感じがする。小さな子供たちは、遊び半分で割り箸を操っている。何気ないしぐさが涙を誘う。<つづく>